佐藤 基氏

株式会社MOTTO
代表取締役


Motto

佐藤氏にインタビュー

佐藤 基氏は、株式会社MOTTOの代表取締役で、企業が抱える様々なマーケティング課題の解決を目指した戦略立案と実行の支援ならびに、インフルエンサーマーケティング事業を展開しています。
2018年に株式会社MOTTOを創設する以前は、株式会社ディー・エヌ・エーにて、「逆転オセロニア」をはじめとしたスマホゲームのマーケティングを担当しました。以来、現在まで約10年間に渡り、計100タイトル以上のスマホゲームのマーケティングに携わっています。


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アプリマーケティングに携わったきっかけを教えてください。

2社目に在籍していたエキサイトで、スマートフォン向け事業のローンチに携わったことがきっかけでした。当時はまだスマホユーザーが非常に少なく、ビジネスとしても黎明期でしたが、エキサイトが業界内では先駆け的なポジションの一社だったこともあり、事業作りと並行して、対外的な情報発信活動を通じたスマホビジネスの基盤づくりにも注力していました。そして、いわゆる“スマホ元年”となる2011年、ディー・エヌ・エーがスマートフォン向けの事業を開始するタイミングで、同社初のスマートフォン事業の担当マーケターとして入社しました。以来、7年間に渡りスマホゲームのマーケティングを担当した後に独立し、MOTTOを設立しました。スマートフォン黎明期からアプリマーケティングに携われたことは、現在の自身のキャリアの原点になっています。

MOTTO社の事業内容、事業ビジョンについてお教えください。

株式会社MOTTOでは、「ヒトの才能とモノの価値を、もっと」を活動のテーマに、主にスマホゲーム、アプリ、エンターテイメントビジネスを展開している企業の抱えるマーケティングの課題を解決し、事業を成功に導くための支援を行っています。現在は、自社単独の取り組みだけではなく、様々な会社と協力・連携して、新しいソリューションサービスの開発、提供もしております。その他、少しでも業界全体への貢献を目指して、セミナーやブログによる情報発信も積極的に行っています。

ご自身で事業をやろうと思ったきっかけはどのようなところだったのでしょうか?

ディー・エヌ・エーでの7年間で、成功も失敗もたくさん経験させてもらいました。その中でも個人的に特にエキサイティングだったのが、黎明期だったスマートフォンビジネスのマーケティングを業界で活動するみなさんと一緒に作り上げてきたことでした。次のキャリアでは、これまでの経験をもとに、この業界の抱える課題の解決ができる存在になりたいと考えました。
業界課題を解決していくには、事業会社、代理店、ソリューション提供企業など、さまざまな立場の会社と協力していく必要があります。立場を超えた「ハブ」になれる存在が必要なのではないかと感じています。自分にできることはとても限られますが、そんな存在を目指して活動していければと思っています。

スマホゲームのマーケティングに携わる面白みや魅力はどういったところにありますか?

個人的には、スマホゲームのマーケティングは、とてもやりがいがあり、個人のキャリアとしても魅力的な業務であると思っています。スマホゲームはビジネスの規模がとても大きいだけでなく、スピードもとても早い業界です。そのためオフライン、オンライン問わず、あらゆるマーケティング手段が選択肢になります。競争も激しいがゆえに、戦略的なマーケティングも求められます。また、多くの場合、マーケティングチームが小規模で、年齢や経験に関係なく、責任の大きい仕事ができるチャンスに溢れています。

加えて、今後は世界市場で勝負する必然性がある業界です。マーケティングのダイナミックさ、裁量の大きさ、そして海外への挑戦権、これはなかなか他の業界にはない魅力なのではないでしょうか?スマホゲーム業界に属するマーケターならでは、の希少なチャンスだと感じます。

様々なタイトルのマーケティングをご経験され、成功も苦労も両方体験してきたかと思いますが、ゲーム業界の今後の挑戦はどういったところにあると思いますか?

ゲームビジネスは「プロダクト開発」と「マーケティング」のどちらも成功のためには高いレベルで求められます。もちろんゲームビジネスの主役は「プロダクト」ですが、プロダクト開発に数年の期間を必要とするからこそ「マーケティング」も同じくらい重要です。しかしながら、ゲームビジネスにおいては、「マーケティング」の重要性が軽んじられる傾向が強いと感じています。その結果として、マーケティングの実績や成果の蓄積や主張がしづらく、結果的にマーケティングの再現性を高め、ゲームビジネスの成功確率を高める障壁の一つになっていると感じています。今後はマーケター自身が結果をしっかり分析して可視化し、成果を社内外に主張していくことがより重要ではないでしょうか。このことにより、ゲームマーケターのプレゼンス向上、キャリアアップの機会の創出や、他の業界からの優秀な人材の流入につながると考えています。

ご自身のご経験から、スマホゲームの成功確率を上げるために開発・マーケティングはどうあるべきなのでしょうか?

開発、運営、宣伝等に多くのリソースを必要とするスマホゲームは、必然的に組織が大規模となるため、開発を担う作り手と、宣伝を担う売り手の役割が明確に分かれていることが多いです。その結果、作り手と売り手の考えや想いが乖離してしまっていることが大きな課題になっているケースをよく見てきました。とりわけ、開発期間が長いタイトルになると、更にその傾向が強まります。また、これはゲーム以外の業界でも言えることですが、「良いゲーム(プロダクト)を作れば売れる」といった“作り手ファースト”のカルチャーが根強く存在し、このことが更に両者の連携を困難にしているといったことも課題であると考えています。

両者の連携が取れないと、適切なマーケティングを行うことができず、市場での成功確率を大きく下げることにもなりますし、特に、「新しさ」が重要となるスマホゲームでは、リリース時のマーケティング戦略が非常に重要となるため、作り手と売り手の密な連携は、市場での成否において極めて重要だと考えています。

組織の構造は容易に変えられない上、社内に存在する“政治的要因”もあり、分断された部門をつなぐことは非常に難しいのですが、そういった中で、唯一のつなぎ役となるのは、プロダクトの持つ「ユーザーに提供する価値の共通理解」であると考えています。

機能的価値を提供するビジネスツール等と異なり、ゲームでは「情緒的価値」が重要となるため、その価値をいかにきちんと言語化して相互理解を図った上で、タイトルに関わるメンバーがワンチームとなれるかどうかが、市場での成功確率を上げるうえで、非常に大切になります。目指すべき価値を共有し、各メンバーがプロダクトへの関わり方を明確にできると、プロダクトへの愛情や理解、アイデアも生まれやすくなる好サイクルも生まれます。

そのためには、まずはマーケターが、プロダクトのユーザー視点での価値や強み=コアバリューをマーケティング視点で定義し、チームに対してマーケット視点を先導して共有することが大切です。そうすることで、自ずとチームが同じ方向を向くことが可能となり、その価値を高め、伝えることに一丸となることができます。

スマホゲームの誕生から約10年が経過した現在では、マーケティングに係る施策のコモディティ化が進行し、そこにおける他社との差別化は困難になってきています。他のゲームより目立ち、ユーザーにゲームの魅力を広く伝えるといった面で、更なる創意工夫が求められるようになる中で、組織における意思決定の仕組みも手伝い、他社の成功事例ばかりを正とし、施策検討の際の拠り所にしてしまうといったことが起こりがちです。しかしながら、他社の成功事例における手法、すなわち施策の部分だけを真似ても、決して同じ結果にはつながりません。

他社とマーケティングを差別化するためにも、まずは前述のプロダクトの価値そのものをユニークなものにする、そしてその伝えるべき価値に併せて、最適な戦略を組み立てていくことが肝になると考えています。テレビCM、デジタルマーケティング、インフルエンサーといったような様々な施策がある中で、伝えるべき価値が決まれば、自ずと施策の優先順位や、注力度合いが明確となり、それは結果的に他社との差別化にもつながります。

最後に、マーケターの方々へのメッセージをお願いします。

強大な開発力・資金力を持った海外のパブリッシャーが日本国内市場に続々と参入してきており、ますます競争が激化していくことが予想されますが、だからこそユーザと市場に丁寧に向き合うことが差別化になり、マーケティングの重要性がさらに高まると考えています。
これからは徹底的に「価値」と「ユーザ」と「チーム」に向き合って、リーダーシップを発揮するマーケターが求められるようになるのではないでしょうか。自分の仕事にもっともっと胸を張れるマーケターが増えるように、僕も貢献していきたいと思っています。

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