森下 明氏

Bushiroad International

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森下 氏にインタビュー

森下氏のキャリアとバックグラウンドについて

調査会社でのFMCG領域の市場調査、広告代理店でのモバイル広告の組織の立ち上げ、アプリマーケティングに従事。その後、複数ゲーム会社でのデジタルマーケティング担当を経て、株式会社ブシロードに参画。デジタルマーケティングチームの立ち上げを行い、2021年9月までは自社パブリッシュタイトルのデジタルマーケティングを統括。現在は、株式会社ブシロードの海外HQであるBushiroad International にてHead of Mobile として海外のモバイルビジネスを統括しています。

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ブシロードについて

トレーディングカードゲームの制作・販売を中心に各種コンテンツプロデュース業務を行う会社として2007年に設立。「ヴァイスシュヴァルツ」「カードファイト!! ヴァンガード」などを中心に事業を成長・発展させ、その過程で「新日本プロレス」や女子プロレスの「STARDOM」が参画、音楽IPとして「BanG Dream!(バンドリ!)」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「D4DJ」「from ARGONAVIS(フロム アルゴナビス)」などの作品もプロデュースしてきました。
現在は「IPディベロッパー」という事業戦略を掲げ、既存のIPを持続的に運用しながら、新しいIPを創造・追加していくことで、提供するサービスの本数を年々拡充しています。

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アプリマーケティングに携わることになったきっかけを教えてください。

新卒で調査会社に入社して、FMCG領域の市場調査に従事していました。市場調査は代理店を介しての仕事が多かったので、より顧客の近くで顧客の考えを知りたいという思いが強くなり、広告代理店に入社しました。モバイル広告黎明期と言える時代の中で、モバイル広告の組織立ち上げに携わり、そこから私のキャリアもモバイルにシフトしていきました。

当時、モバイル領域では大手の競合も多く、発注を頂くのが簡単ではありませんでした。そのような中で、自社を選んでいただくために徹底的に先方のビジネスやアプリを理解して提案をするしかなく、そこで深い知識の身につけを学べたのが、非常によかったのかなと思っています。

その後は、アプリの広告主側でデジタルマーケティングを幅広く経験し、現在の株式会社ブシロードに、デジタルマーケティングチーム立ち上げのタイミングで参画しました。

2021年9月までは自社パブリッシュしている全タイトルのデジタルマーケティングを担当しました。役割に当てられたKPIだけではなく、組織の目的の最大化や自分の責任範囲を増やしたいという想いから、Bushiroad International のHead of Mobile に着任し、現在は、PL(損益計算書)を持ちながら事業全体のマネジメントを行っています。

現在の役割についてお聞かせください。

株式会社ブシロードの海外子会社Bushiroad International のHead of Mobileとしてモバイルビジネス全体を統括しています。現地のメンバーが7人程おりまして、各タイトルのプロデューサー、デジタルマーケティングスペシャリスト、あとはコミュニティマネジメントのスペシャリストといった構成です。

現状は国内でパブリッシュ、あるいは協業タイトルとしてリリースしたアプリのローカライズチームがいます。具体的には『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(ガルパ)』『ヴァンガード ZERO』『D4DJ Groovy Mix(グルミク )』『スクールアイドルフェスティバル ALL STARS(スクスタ)』『新日本プロレス STRONG SPIRITS』のGlobal版を展開しています。また、Bushiroad International では、ミッドコアゲームだけでなく、現在ハイパーカジュアルゲームの開発にも取り組んでおり、グローバルでエンジニアの採用活動も行なっています。

現在のBushiroad International の組織構造や運営体制について教えてください。

私はHead of Mobile としてマーケティング開発の両面を統括しています。
複数のプロデューサーが、各タイトルの売上高、営業利益を最大化するための指揮をとっていますが、私も各タイトルの動向を把握できるようにしています。その中で、どのタイトルがモバイル事業全体の売上・利益に対して感度を最も持っているかを常に私が確認しております。イメージでお伝えすると、どのタイトルのどの変数を変動させたときに収支への跳ね返りが最も大きいかを特に注視しています。
そういった、直接的な収益性の視点に加えて、直接的な収益性以外の視点もの考慮しております。例えば、日本側からのグローバルへの投資判断とシナジーのある効果を生めないかなども踏まえて、リソース配分をしています。

組織自体が7、8人で構成されているというのもありますが、1人のマネージャーがPL責任を持つのは、理にかなった組織構造だと思います。
組織をマーケと開発で縦割りにすると、局所最適化に基づいた議論(例えば、マーケティング側から開発側への「ARPU向上」「継続率向上」といった要求や、プロデューサーや開発側からマーケティング側への「インストール増加」などをお互いポジショントークで要求しあう不毛な煽り合い)が起こりやすくなってしまうのではないかと思っています。

プロダクト(開発側)との連携、組織構造や、その中でのアプリマーケターの役割についてお考えをお聞かせください。

私の著書(森下氏の著書である「いちばんやさしいアプリマーケティングの教本 人気講師が教えるスマホアプリ収益化の大原則」)でも書いているのですが、アプリマーケターは、アプリを用いて顧客に価値を提供することを通じて自社の売上・利益を最大化する人だと考えています。
売上・利益を最大化するのがマーケターの仕事だとしたら、利益計算やある程度の会計について理解があるべきだと思います。
もしこうした理解がなければ、マーケティングの投資金額がなぜ妥当なのかということを説明することもできません。説明ができたとしても、広告費を回収できたか?いつ回収できるのか?といった局所的な回答止まりでしょう。

広告費の回収状況を把握することはもちろん大事ですが、それだけでは局所最適を招く可能性があります。
事業全体として売上利益は上がっているの?下がっているの?それは何故?ということを日々考えているプロデューサーからすると広告費の回収状況は大事なことではありますが、情報の一部でしかありません。

「今まで直近3カ月で稼いできた利益を全てこのキャンペーンに投入します。それによる売上と利益の期待値がこうだから、このリフト分は将来、何カ月分の収益を生み出したことになります。だから実施しましょう。」というようなことが本来言えなくてはいけないと思うのですが、「そこまで考えるのはプロデューサーの役割」だというようなセクショナリズムをマーケター側が持ち出して思考を止めてしまうことがよくあります。

組織を縦割りにすると、そういったセクションの壁がうまれて、お互いを批判し合うということが起こりがちです。階層構造で各KPIを並べてみると、開発とマーケ側のKPIは複雑に入り組んでいるので、組織を縦割りにしたとしてもそれに合わせて、綺麗にKPIの責任を分けることはできないと思います。
そういったこともあり、縦割り組織よりも、全員が売上・利益を最大化するためにどうしたらいいか考えられる組織構造がよいのではないでしょうか。そのためにはモバイル事業のPL責任を負うマネージャーがマーケティングと開発双方の意思決定ができる環境にすべきであり、現状Bushiroad International のモバイル組織はその環境を有しております。

現職に就任され、シンガポールに移住をされるとのことで、グローバルに挑戦したいという思いの背景にはどのような考えやきっかけがありますか?

中長期的にみて、人口動態なども踏まえると日本市場はどうしても縮小してしまう市場なので、グローバルにキャリアを振らないと会社の売上利益に貢献することは難しいのではと思っておりました。
ブシロードはTCG市場の販路拡大のために早くからグローバル思考を持っておりました。そのため、グローバルの拠点としてシンガポールとアメリカの拠点があり、自然とそこで働いてみたいという意思が芽生えました。

また、一度日本の外に出て、日本を相対的に比較したかったというのもあります。「日本はよいところだ」という人も多いですが、相対比較しないと日本が良いのか悪いのかも判断できません。

子供の教育の観点でも、グローバルでの競争力をつけるために、グローバルを経験させることに興味を持っている方々も多いのではないかと思います。世の中の情報において、日本語で書かれている情報と英語で書かれている情報では圧倒的な差があります。
ある統計データによると、ネット上で閲覧可能な情報の約60%が英語で記載されているのに対し、日本語は2%程度だという事実があります。
言語によって最新の情報をキャッチアップするスピードが異なるだけでなく、世界で広く使われる言語を通じて多様な人とのコミュニケーションができるメリットがあると思います。そうした意味でも、私自身、子供が成人する際に価値のある言語や物事の考え方、文化的な多様性を学んでほしいという想いもあります。

ブシロードさまは早くから海外進出をしていたかと思いますが、社内のカルチャーが元々海外志向だったということなのでしょうか?

ブシロードの祖業はトレーディングカードゲームです。トレーディングカードゲームが生まれたのはアメリカですが、文化と市場の発展では日本の方が進むのが早かったと認識しております。ただ、日本市場だけだと人口減少でマーケットが縮小するのが見えていたため、成長が見込める海外市場(特に欧米、アジア)に早くから進出していました。

新しくマーケターになられた方やこれからマーケターを志す方へのメッセージをお願いいたします。

もしご自身があるアプリの事業責任者だったら、限られた予算、リソースを何にどう割り当てて、どうやってKPIをリフトさせていくかという視点を持って仕事をするのがよいと思います。

新しくマーケターになった方々やこれからマーケターに挑戦していきた方であれば、自分の領域でやれるデジタルマーケティングおよびマスマーケティングというものをしっかり身につけつつも、マーケティング(≒プロモーション)で変えられるKPIが限定的であるということもちゃんと理解する必要があります。
その上で、売上・利益の最大化を考えるときに自身が所属する組織上、責任を負っていないKPIが仮にあったとしても、そのKPIの責任を負っている部署に直接意見すれば良いと考えております。

そこには、セクショナリズムの壁や、仕事の範囲に関する指摘を受けることもあると思いますが、顧客への価値提供なくして、売上利益の最大化はないと思っています。そうしたことも踏まえて、顧客に価値を提供するために変えなければならないことがあり、その変えなければならないことが自身の所属する組織で責任を負っていないのであれば、責任を負っている部署に対して提案をするなり、議論の場を設けるなりして、建設的に要求を突きつけるべきです。
そのような行動を通じて、に合わせて自分自身のキャリアの幅も広げていくことができるのではないかと思います。

今回のインタビューでお伝えしきれない部分は、私の著書である「いちばんやさしいアプリマーケティングの教本 人気講師が教えるスマホアプリ収益化の大原則」にて解説をしています。
モバイルゲームに関わる方々、非ゲームの方々も含めてアプリマーケティングに関わる方々には参考になる点も多いかと思いますので、ぜひご一読いただけますと幸いです。

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